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#01 BASE COFFEE オーナー加藤伸謙さん

POSTED ON : Apr 2, 2021
名古屋覚王山_リノベーション事例_BASE COFFEE01

開業でもっとも大事なことは、開業した後。

ずっとながく営業を続けていただきたい。

そんな想いを込めて、「サーカス」が店舗設計を手がけたオーナーさんが歩む、リアルな開業ストーリーをお届けします。

「ベースコーヒー株式会社」代表の加藤さんは、2014年にはじめてお仕事をいただいたお相手です。それ以来のお付き合いで、今回のコーナーで、ぜひお話をご紹介したいと思い、ご登場いただきました。

加藤さんは、当初、コーヒー豆の販売店にするつもりで、キッチン設備は最小限に。シンクに給湯設備もないほどでした。けれど、今では、愛知県一宮市本店、名古屋・覚王山、御園通の3店舗で約15名のスタッフを抱える社長さんに!

開業までの準備期間、空間づくりのこと、開業後の動き、今でも「本当にたいへん」というお金のことなど、ざっくばらんに語っていただきました。


<前半>

●「BASE COFFEE」とは?


名古屋覚王山_リノベーション事例_BASE COFFEE02
CIRCUSが手がけた内装のなかでも、実験的な要素が多い「BASE COFFEE kakuozan」

今回、お話をおうかがいするために、おじゃましたのは「BASE COFFEE kakuozan」。地下鉄・東山線覚王山駅から徒歩1分という、便利な立地にあり、自家焙煎のスペシャルティコーヒーがいただけます。

「BASE COFFEE」は、2014年4月に愛知県一宮市で、世界各国からよりすぐりの生豆を自家焙煎し、販売する小さな豆屋としてはじまり、2019年11月に名古屋・覚王山へ。2020年夏には伏見駅近くの伏見駅近くにも「BASE COFFEE misonodori」をオープンされています。

 

●30歳までに開業したい。会社員をしながら開業準備をスタート。


太田:お店を開くきっかけは、何かあったんですか?

加藤さん:ずっとカフェ業界や飲食業界で働いていて、30歳までに開業しようと思っていたんです。24歳のときに大阪から名古屋に来て、スターバックスコーヒーで5年ほど、契約社員として働いていました。

29歳の時に、人事制度の変更をきっかけに。でも、正社員になると、辞めにくくなっちゃうし、じゃあこのタイミングでと。

最初は、当時住んでいた稲沢市のスーパーの近くで探していたんです。

スーパーの近くだと、ついで買いがあるかなと思って。広さは5坪とか10坪とか、なるべく小さくやりたいなと。でも、なかなか見つからなくて、知り合いの紹介でほとんど唯一空いていたのが、1店舗目になる一宮の物件でした。

 

 

●いちばんの心配は、予算。本当にできるのかな〜?


一宮の改装前写真

太田:物件を契約したのが、2014年2月でしたよね。

それから週に1度、「どういう場所にしましょう?」といった打ち合わせをはじめていきました。こちらで提案の資料をつくって、加藤さんにみてもらって、資料を持って、調整しての繰り返し。

加藤さん:仕事と並行しながら、平日のお休みがあったので、その日に打ち合わせをしていました。僕の心配は一番が予算。お金、こんだけしかないよ。それでも、やってくれる、といってくださって。

でも、本当にそのなかで、できるのかな〜と思いながら(笑)。だから、ほとんどお任せで、僕の要望としては、木を使った店舗にしたいぐらいでしたね。

一宮店工事中の様子

太田:ぜんぶ任せてもらえたので、全体のイメージや施設内容を共有して、使い勝手は相談して、進めていきました。

予算を削減する為にも図面を描く量は必要最低限にとどめ、なるべく毎日現場に入って職人さんと作業しながら、その場で考えながらつくるスタイルをとりました。

加藤さん:工事期間は、1ヶ月ちょっとですかね。だいたい工事期間は無償で貸してもらえて、それが一般的に1ヶ月半くらい。家賃が発生する分、オープン日は決めちゃっていました。

完成したのは、オープン日の朝6時くらいでしたよね。お店に行ったら、大工さんと太田さんが車で寝ていて。その姿を見てから、朝一で焙煎して、商品を並べました。

太田:不安にさせて、大変申し訳ないです。やりたいことがありすぎて、もしかしたらこういう可能性も、と考えてしまって。最後はおさめなきゃいけないので、そうすると、夜中とか関係なくなってしまい(笑)

一宮店内のお写真

 

 

●どんなお店にしたいのか?


持ち帰り用のスペシャルティコーヒー。一宮市のお知り合いにデザインはお任せ。より手軽に飲んでもらえるような、紅茶のようなティーバッグタイプも。

太田:オープンから3年ぐらいは、豆を売る専門店という感じでしたよね。

加藤さん:そうですね。純粋にコーヒーの多様性、普段飲んでもらっているものと違っているコーヒーを知ってもらうきっかけになってもらえたら、と思っていたんですよね。

一般的なコーヒーの価格は不安定で、コーヒー危機が起きた年は、コーヒーを生産すればするほど赤字になるということも起こってしまいました。そのような先物取引とは関係のない状態で、僕らの扱うスペシャルティコーヒーは取引価格を品質等で決めるような仕組みになっているので、生産地のスペシャルティコーヒー化が進んできています

でも、そういうコーヒーを飲んだほうがいいよ、と真剣に投げかけたところでインパクトがない。単純においしいコーヒーを飲んでもらって、背景にはそういったストーリーがあったみたいなところにつながればいいな、と。

それが出発点だったので、食器類も一切置いていなくて、テイクアウト用の紙コップと、お菓子をちょびっと出してぐらいでしたね。それが、だんだんだんだん、ちゃんと店内で飲ませろよ。なんで紙コップなんだよ、みたいな文句を言われはじめ(笑)。今のように、ゆっくり飲めるような空間につながっていきました。

 

 

●「オープンしてから」が始まり。半年後に資金が底をつく。


「本日のコーヒーS」480円。モーニングやランチもメニューに並ぶ。

太田:オープンしてから、集客はどうされたんですか?

加藤さん:難しかったですね。工事していたので、近所の方が1ヶ月ぐらいは様子見で来てくれたんですが、2ヶ月目、3ヶ月目からは、知り合い関係が少ない。そもそも、僕は一宮に知り合いがいないですし。大阪から来てくれるのも、初月ぐらい。

だから、オープン3ヶ月目くらいからが大変でしたね。ひとりの時間も長くなってくる。飲食店は待ちの仕事ですよね。来ないと、焦る。今日はお客さんがふたりしか来なかった、みたいなことが、辛かった記憶がありますね。

資金的にも、スタートの予算が甘く、運転資金を甘くみていた。商社から生豆を60kgごとにしか仕入れることができなかったので、原料在庫としては、それぞれの産地ごとに数ヶ月分の在庫になるんですよ。今は、どこの商社でも1kgからでもポチッと買えるようになったんですが、当時はできなかった。

それで支払いは最初で、豆の仕入れが何十万、売れ行きも同じぐらい、となると、マイナス、マイナス、マイナス。資金も底をついちゃって。

ダメもとで銀行へ相談に行ったら、何とかその月中に工面できたのでよかったですが、あの時のお金を払えないという事実と、何か恐怖のようなものの経験は、今でも鮮明に覚えています。

今思うと、もっと早く相談に行くべきでしたが、当時はこれ以上の借入は、という後ろめたい気持ちが強かったんだと思います。

つづく。

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